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2017-08-28 16:46:00

心だに誠の道にかなひなば祈らずとても神や守らん

 

古歌


2017-08-25 16:51:00
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『たのしむ数学10話』足立恒雄(岩波ジュニア新書)

 

数ある数学史分野の中で、意欲ある中学生(あるいは小学生?)からその保護者たる大人まで、誰が読んでも最後まで無理なく数学の面白さに引き込まれる内容になっており、推薦したい一冊である。
ところで、学校教育で使用されるテキストに関して一言。私が知る限り、アメリカとイスラエルの数学教育(中高生用)で使用される教科書テキストと日本のそれとを比べると、アメリカ-イスラエル版が格段にページが分厚く、中身も濃い状態になっていることに驚かされた経験がある。(我輩は、初級ヘブライ語しか分からないので、イスラエル版を全部読みこなした訳ではないが、)この背景には、どうやら両国が積極的に能力別の理数教育を行うことで、将来にわたる国の命運をかけていることと深い関係があるようだ。生徒が学習を進める中で、知らず知らずに、飽きずに没頭できる教科書があれば、確かに理想ではあるが、そうそうにお目にはかかれないだろうが、サブテキストとして数学史に触れた内容に触れて一層の理解を深めてもらいたいと思いまする。


2017-08-23 18:09:00
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『スペイン断章上下』堀田善衞(集英社文庫)

 

堀田善衞という作家を今まで誤解していた。その昔、吾輩が嫌いなノーベル文学賞受賞者であるO氏とかなり懇意だった関係から、てっきり左巻きの人物ではないかという印象を強く持ち続けていたのである。しかし、実のところ典型的な日本人作家に見られるような幼児的左翼病(?)に染まることなく、自らの眼球を使って歴史を捉えるという鋭い観察眼が、こと彼の文明批評に遺憾なく発揮されていると再評価したいと思う。そして、その力量を証明する作品がこの『スペイン断章』である。
作家自ら、ヨーロッパ文化とイスラム文化の接点を成したこのスペインに、10年もの歳月にわたって踏みとどまり、その地を歩いて、見て、聞いて、肌で感じて、そして書き留めてという、まさに五感をフル活動させながら、完成させたこの作品を今回推薦したい。


2017-08-22 20:44:00
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『すべては今日から』児玉清(新潮文庫)

 

児玉清と言えば、パネルクイズ「アタック25」の司会者として有名であろう。(残念ながら胃ガンのために2011年に逝去された。) 我輩の父親と同年齢でもあり、彼のブラウン管からの語りかけが、時にどこか父親からの語りかけではないかと錯覚を引き起こされることがあった。彼が番組内でよく使っていた「慎重かつ大胆に」というクイズアタッカーへのアドバイスは、中高生の学習態度にも反映してもらいたいと感ずるところである。
吾輩は児玉清氏が芸能界きっての読書家であることを本書を通じて知った。〈読書〉への目覚めを語る箇所や翻訳を飛び越えて洋書で読み進める海外ミステリーへのこだわり、さらに運命のもつれから俳優を目指すことになったいきさつなど鮮明な体験談として、読んでいて思わず引き込まれてしまう内容となっている。児玉清氏が、いかにこよなく読書を愛さずにおれなかったかは、たとえ不満がある作品に対してさえも、書評の中でオブラートに包んで読者に伝える暖かな眼差しからひしひしと感じるところである。是非とも読んでいただきたいエッセーである。


2017-08-22 15:28:00

風下の陸地においあげられる屈辱を忍ぶよりは、むしろこの怒濤さかまく無窮の底に滅びたほうがましではないか、例えその岸は安全の地であろうとも!

 

ハーマン・メルウィル『白鯨』