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2020-07-17 22:45:00
今日の書評

 

村上陽一郎『ペスト大流行』(岩波新書)
現在、全世界で新型コロナウィルスという言葉を聞かない日はない現行のパンデミックの終焉がいつ到来するか、全く掴めない状態が今後も少なからず継続すると考えていいだろう。そうした不穏な世界の中で、自分たちが置かれた立場を歴史的に再考するに最適なものが本書であると、わが輩は自信を持ってお勧めしたいと思う。
本著は科学史、科学哲学の大家の最初期の作品である。今読み直してみても全く、古さを感じさせない内容となっており、驚愕する。
結果的にペストによる、ヨーロッパ中世世界の崩壊が、近代科学の大きな遠因の一つとなったことは確かだとしても、その結論に至るまでには、それ程単純な図式で説明できないことを伝えてくれるという意味でも貴重な一冊である。ぜひご賞味あれ。尚、元公共放送出身の池上某氏が書かれた『感染症対人類の世界史』という、かなり怪しい本を読むより、少なからず歴史を経た本書が断然ためになることをお伝えして、締めまする。

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