『すべては今日から』児玉清(新潮文庫)
児玉清と言えば、パネルクイズ「アタック25」の司会者として有名であろう。(残念ながら胃ガンのために2011年に逝去された。) 我輩の父親と同年齢でもあり、彼のブラウン管からの語りかけが、時にどこか父親からの語りかけではないかと錯覚を引き起こされることがあった。彼が番組内でよく使っていた「慎重かつ大胆に」というクイズアタッカーへのアドバイスは、中高生の学習態度にも反映してもらいたいと感ずるところである。吾輩は児玉清氏が芸能界きっての読書家であることを本書を通じて知った。〈読書〉への目覚めを語る箇所や翻訳を飛び越えて洋書で読み進める海外ミステリーへのこだわり、さらに運命のもつれから俳優を目指すことになったいきさつなど鮮明な体験談として、読んでいて思わず引き込まれてしまう内容となっている。児玉清氏が、いかにこよなく読書を愛さずにおれなかったかは、たとえ不満がある作品に対してさえも、書評の中でオブラートに包んで読者に伝える暖かな眼差しからひしひしと感じるところである。是非とも読んでいただきたいエッセーである。