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2019-06-03 23:15:00
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『イタリアの旅から』(多田富雄)新潮文庫

本書は、鋭い文学的素養を持った免疫学者による美術紀行である。吾が輩としては、特に南イタリアとエトルリアに関する章(5章~6章、11章)をを読者への推薦としたい。
ゲーテの『イタリア紀行』を引き合いに出すまでもなく、今まで数多くのイタリア紀行が書かれて来た。しかし、本書は切れのある簡略的な文体で一貫して書かれていることが特徴である。
ページを読み進めて行く途上、死への眩惑すら想起させる太陽、太陽の赤味と好対照を形作る紺青の地中海、そして日常生活の中にしっかりと息づいた生と死との交錯などをまざまざと描き出してくれている。
故多田富雄氏の描写能力に感謝申し上げるとともに、アルキメデスや「万物は数なり」と唱えたピュタゴラスの第二の祖国である南イタリアに乾杯!󾭠