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2017-11-24 16:38:00
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『ヨーロッパ歴史紀行 死の風景』(立川昭二)

メメント・モリ(死を想え!)

果たしてここから何をイメージされるだろうか?

本書は壮大な時空の中で展開されてきた(もちろん、現在も進行中である!)死を主題としたヨーロッパ文化理解のための優れた文化史である。古代エジプトから現代に至るまで、死への眼差しを様々な角度から掘り下げつつ、現代人が忘却の彼方へ追いやった「生と死の尊厳」について、改めて考えるヒントを散りばめた内容となっている。
とりわけヨーロッパ中世から近世初頭にかけて、死は極めて身近な存在であり、その死と戯れる様相を振り返ったとき、我が日本においても長らく死は怖れや穢れの対象であったと同時に畏敬の眼差しに晒される何かでもあったと考えられる。
現在高度な医療技術が進化することに反して、いのちの重みが低下していく現象や、死に行く者との連帯をどこか希薄にさせている医療空間を介護として考える際にも、また生命倫理の基本書として活用する際にも本書を参考にしてはいかがだろうか?