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2017-08-10 18:35:00
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『ソクラテスの弁明』プラトン(久保勉訳) 岩波文庫

 

今日は前回とガラッと変わって、堅めの書をご紹介いたしまする。
いまさら敢えて書評で紹介するような真新しい作品ではないが、将来ある中高生には是非とも読んでもらいたい作品である。
我が輩とこの作品との付き合いは、哲学科在籍時に、古典ギリシア語履修の教材として、初級文法終了後、担当教官と一字一句噛み締めつつ読み込んだ経験があって実に懐かしい。
さて、我々はこの作品から、一体何を読み取るべきなのだろうか?
西洋哲学史の解説書を紐解くと、そこには「汝自身を知れ」、「悪法も法なり」、「アポルロンの神託」、「ダイモーンの声」など様々なキーワードが立ち並び、読者の混乱を引き起こすことは避けられないであろう。そこで我が輩は、まずは安易にこうした解説書に頼ることなく、できる限り速読ならぬ「遅読」に徹して、プラトン描くソクラテスの使命をじっくり聞き取ってもらいたいのだ。その作業の合間におぼろげに、「人間としての(?)分際」を知ることの意味や「無知の智」の自覚がもたらす意外な効用について、読後に感慨を深められると確信いたしまする。